「この先の話も全部聞くの?」
 ツカサは視線を床に落として訊いてきた。
「反対……?」
「そういうわけじゃないけど、心配ではある」
「……そう言われると、なんだか続きを聞くのが怖くなっちゃうな」
「翠、焦る必要はない。記憶を取り戻すことも、何もかも。焦ったってすぐに答えが出ないもののほうが多い」
 私を見たツカサの目は真っ直ぐだった。
 どこまでも見透かされてしまいそうなくらい、真っ直ぐな目。
「……焦らないようにする。お話を聞いて頭がぐちゃぐちゃになっちゃったら……そしたら、お話聞いてね?」
「了解」
 何を話したらいいのかわからなくて、目の前にあった手帳に手を伸ばそうとしたら、
「その前に水分補給」
 と、静かに怒られた。