「座らないの……?」
 ツカサは無言で歩いてきてスツールに腰掛けた。
 壁を背に、私を見るでもなく口を開く。
「どこまで聞いた?」
「六月六日。秋斗さんと藤山でデートして、お付き合いできないって断ったところまで」
 どうしてか、あまり話したくない。
 でも、訊きたい……。
「ツカサは私が秋斗さんを好きだって知ってた?」
「……知ってた。その前の出来事だって聞いたんだろ?」
「誕生会の出来事……?」
「そう」
「うん、聞いた……。ツカサにはいつも迷惑をかけてばかりだね」
「……別に迷惑だと思ったことはない」
「ツカサはぶっきらぼうだけど優しいよね」
 思わず苦笑がもれる。