「リンゴジュースやグレープジュースが好きなんですか……?」
 秋斗さんは果汁百パーセントのジュースやミックスベジタブルジュースを持っていた。
 もちろん、自販機で売っている紙パックのタイプ。
「好きというわけじゃないけど、今はこういうものやハーブティーを飲むようにしてる」
 答え方に違和感を覚えた。
「コーヒーをブラックで……とかそんなイメージに見えますよね?」
 思い付きを口にすると、「そうだね」と笑った。
「でも、翠葉ちゃんと出逢ってからはハーブティーを飲むようになったんだ。このジュースは冷蔵庫に入れておいたら翠葉ちゃんがいつでも飲めるでしょう?」
 買ってきたそれらを冷蔵庫に入れにいくと、戻ってきてスツールにおさまる。
「次の休憩ではミネラルウォーターを買ってこないとね」
「……本当に知り合いで、本当に私のことを知っているんですね」
 私は何も思い出さないというのに、私の飲み物を飲むときの癖まで知っているのはなんだか奇妙にさえ思える。