「私、海外の空は見たことがありません。今日の空も毎年見ている空だけど、今日は特別きれいに見えます」
「それは俺様効果だな」
 ケケケ、と笑っては背中を押され、ベッドへ戻るよう促された。
 蒼兄や唯兄、お父さんやお母さん。桃華さんやツカサもこの空を見ているだろうか。
 みんなが同じ空の下にいるって、すごいことだね……。
 でも、このときの私は知らなかったのだ。
 こんなきれいな空を見る余裕もなく、唯兄が仕事に追われていたことなど――。

 夕飯が終わり、歯磨きを終えた頃にツカサはやってきた。
 最初になんて声をかけたらいいのかわからなくて、「おかえりなさい」と口にした。
「はい、ただいま」
 言うなり携帯の操作を始める。