こんな会話をいくつかしただけだった。
 でも、たおやかで余裕のある人に思えた。
「長居は禁物ね」
 真白さんは椅子を立ち、一緒にエレベーターへと向かう。
 外に出ると、ハナちゃんは真白さんに抱っこをせがんだ。
「さすがにこの暑さじゃハナは歩けないわね」
 そう言って抱き上げる様が"お母さん"な気がした。
「翠葉ちゃんは先に九階へ戻ってもらえる?」
「え……?」
「私はこの子が一緒だから、屋上から地下までノンストップで降りなくちゃ」
「やっぱり、ハナちゃんをここへ連れてくるのって……」
「本来ならばNGよ」
 真白さんはいたずらっぽく笑った。
「涼さんが珍しくこんなワガママ言うから困っちゃったわ」
 と、全然困っていない顔で言う。