「この子、人に全然懐かなくて、家にお客様がいらっしゃる日はずっと吼えているような子なの」
 足元でじゃれつくハナちゃんからはそんな気配は微塵も感じられない。
「そうなの?」
 ハナちゃんに尋ねると、「なぁに?」と言うかのように首を傾げた。
「かわいいっ!」
 抱え上げるのは少し怖くて、椅子から降りて床に座り込む。と、ハナちゃんは膝の上に上がりこみ、くるっと丸まって落ち着いた。
 ハナちゃんの柔らかな毛並みを堪能するように撫でていると、撫でられているハナちゃんもうっとりとした表情をしていた。
 テーブルの上にお弁当箱があるところを見ると、涼先生はここでお昼ご飯を食べたのかもしれない。