「寝覚めが悪いって、こういうことをいうのかな……」
 頭の中で繰り返されるのは、「ごめんなさい」と謝る自分の声。
 それに答える声は同じなのに、全く違う声音で二種類……。
 自分が持っていたはずの記憶の一部なのだろう。
 そうは思うのに、それ以上はどうしても思い出せない。
 基礎体温を測り終え、カーテンを開けるためにベッドを下りた。
 先生がいいと言うのだから動いてしまおう。
 九階の個室は明らかに今まで使ったことのある個室よりもランクの高い部屋だ。
 何せ、部屋の中を歩く余裕があるのだから。
 ソファもあればローテーブルもある。
 ベッドもシングルよりは少し広めで鉄パイプでできたベッドじゃない。
 冷蔵庫もボックス型の小さなものではなく、一般家庭にあるものよりも少し小さい程度。
 それは今のところ使ってはいなかった。
 そんな部屋を窓際から見渡している。