「痛いけど、まだ我慢できるから……」
「悪いがな、今度からそういうのはなしにしてくれ。痛かったらすぐにナースコールだ。いいな? これは俺との最初の約束だ」
「……はい」
 脅すとかそういうものではなく、有無を言わせない何かがあった。
「よし、じゃぁ今日の治療はここまで。ただし、痛みを感じたらすぐに呼べ。いいな?」
「はい……。ありがとうございました」
 先生が出ていくまで、お母さんと蒼兄は軽く頭を下げていた。
「型破りなお医者さんだねぇ~」
 唯兄の言葉に病室の雰囲気がガラっと変わる。
「翠葉、本当に痛みが消えたの?」
 ベッド脇に来たお母さんに訊かれる。
「うん、さっき……痛みで目が覚めたのだけど、そのときの痛みは確かにないの」
 自分でも不思議で、なんだか唖然としてしまう。