宿舎となるホテルのロビーを通ると、ひとりの人間に声をかけられた。
 相手は同じブロックから出場が決まった人間だった。
「俺、滝口隼人(たきぐちはやと)海新の三年。なーんかさ、いつか藤宮くんと話せないかと思ってたんだけど、なかなか機会ってないもんだよね」
 わざわざ自己紹介されなくても知ってる、と思っていると、
「君っていつもそんな顔してるわけ? いや、かっこいいけどさ」
 そんな顔とはどんな顔だろうか。
 自分が把握している感情としては、面倒くさい、それひとつなのだが。
 話しかけてきた人間は、雰囲気が若干海斗に似ていた。