携帯をポケットに突っ込み自転車に跨る。
 ペダルを漕ぎ始めてすぐに私道へ入り、緩やかな上り坂に迎えられる。
 ペダルに全体重をかけて漕ぐ。
 俺は、この坂を上り続けたらどこへたどり着くのだろう。
 俺はどこにたどり着きたいのだろうか。
 ただ、たどり着いたその場所に、翠がいてくれさえすればそれでいい。
 この俺が恋愛――? 人を好きになる?
 わからない。
 俺はそんな人間だっただろうか。
 考えても出ない答えにイラつきながら、何度も左右交互にペダルを漕いだ。