「秋斗先輩のこと全般、かな。付き合っていたことも何もかも忘れているんだ」
『じゃ、海斗と飛鳥は連れて行かないほうがいいですね。あのふたりは口を滑らすのが得意ですから』
 本当に冷静に分析するんだよなぁ……。
 桃華に感心しつつ、
「それは桃華に任せる」
『ちょうどいいです。ふたりともテニス部ですから部活で来れないことにしておいてもらえますか? 佐野はインターハイの調整に入っているから時間の融通がきくって言ってました。十一時頃がいいかもしれません』
「桃華、ありがとう。……でも、そんなにしっかりしなくてもいいから」
『……それは、蒼樹さんの前だけにします』
「電話だって俺の前じゃない?」
 訊くと、少し時間を置いてから「実物の前」と小さな声が返ってきた。