「翠葉ちゃん、お水持ってきたよ」
 彼女は藤原さんに抱きかかえられるようにして座っていた。
「ありがとう」
 藤原さんにグラスをテーブルに置くように指示される。
「彼女、どうかしました……?」
「入院してからずっとなのよ。夜の病院ってあまり気味のいいものじゃないでしょ? それでこの時間には情緒不安定になるの。大丈夫よ、いつものことだから」
「……翠葉ちゃん?」
 彼女の身体がビクリ、と反応する。
 ……あぁ、そうか。これもカモフラージュだ。
 彼女が怖がっているのは夜の病院ではなく、俺、だ――。
「ごめ、なさい……」
 切れ切れに聞こえる彼女の声。
 泣くことを必死で我慢していることがわかる。