『ちゃんと……ちゃんと会って謝りたくて……』
 目を瞑って両手で携帯を握りしめている彼女が容易く想像できた。
「そう、いいよ」
 彼女の緊張はまだ解けないまま――。
 悪い、こんな方法しか思いつかなくて。
「謝りたいってことはさ、俺に悪いことをしたと思ってるんだよね?」
 ゴクリ、と唾を飲む音まで聞こえた気がした。
『はい。すごく、ひどいことをして傷つけてしまったと思っています……』
 ……確かに俺は傷ついた。けど、君はそれ以上に傷ついただろう?
 君のこと、少しだけならわかるんだ。
 ずっと見てきて、ずっと君のことだけを考えてきたのだから。
 簡単に許したところで君は俺に対する遠慮が抜けなくなるよね。
 それなら、そんな棘――いや、毒、かな。
 そんなものは早くに出してしまったほうがいいんだ。