「悪いっていうか……ありがとう、かな」
 こういう場合、なんて言ったらいいものか……。
 どういう表情を作ったらいいのかがわからない。
 すごく嬉しいのとすごく申し訳ないのと――すごく悔しいのと。
「俺は司が少し羨ましい」
「は?」
 司は眉間にしわを寄せたまま、ひどく嫌そうな顔をした。
「翠葉ちゃん、俺にはそんな相談はしてくれない」
 なんでも話してほしいし、なんでも聞くのに……。
 でも彼女は俺には話さない。
「話してくれるからってそれがいいこととは限らない」
 司は言ってから時計に目をやり携帯を手に持った。