「違うわよ……」
 俺の考えを察したらしい湊ちゃんが否定した。
「危篤とかそういうんじゃないの。ただ、面会するってだけ」
「え……?」
 それはそれで十分衝撃的なニュースだけど……。
「でも、まだ秋斗は呼ばれていないはずよ」
 確かに呼ばれていなければ声をかけられてもいない。
 その事実に気分が落下し、思わずエレベーターホールにしゃがみこむ。
「秋斗、スーツが汚れる。あんたがスーツ着てるってことは、これから本社で会議なんでしょ?」
 もうスーツなんてどうでもいいし、会議なんてもっとどうでもいい。