『あ、昇か? 俺だ』
「……ざっけんな。こんな朝っぱらに電話してきて『昇か?』じゃねぇ……」
 時計を見れば朝の四時。向こうは昼か?
『まぁ、そう言うなよ』
 相変わらずケラケラと話すのは相馬。
『急に話がまとまって帰国できることになった。しかも一週間後の便でだ』
「まだわからないとか言ってなかったか?」
 声を潜めつつ、栞を起こさないようにリビングへと移る。
『まぁな。何がどうしたことか、急に扉が開いたんだわ』
 面白そうにくつくつと笑う声が聞こえてくる。