「翠葉」
 名前を呼ぶと、少し気まずそうに「お父さん」と呼んでくれる。
 答えはわかってる。でも、俺は訊くんだ。
「具合はどう?」
「ん……大丈夫」
「そう」
 やっぱりなぁ、と思いつつ、翠葉の脇にある花壇に腰を下ろした。
「お母さん、元気……?」
 上目がちに訊かれた。
「ん~……何か聞いた?」
「…………」
 あぁ、聞いたんだな。
 こういうところでは嘘がつけないのに、具合を訊いたときは決まって「大丈夫」と答える。
 そんな翠葉に思わず苦笑。