光のもとでⅠ

 彼の生い立ちは静から聞いて知ってはいたが、そんな不幸を背負っている人間には見えなかった。
 しかし、兄妹ごっこなんてものをするくらいには"家族"を求めているのかもしれない。
 何より助かっていたのは、碧が取り乱しそうになるとき――。
 彼の発する言葉は俺や蒼樹が口にするより、現実味と重みがあり、碧が冷静になれてしまうほどの効果があった。
 なんだか、彼が我が家にいてくれると妙にバランスがいい。
 現在彼の身元引受人は蔵元くんだと言うが、蔵元くんはまだ若い。
 これは俺の希望というか願望なんだが――。
「唯くん、うちの子にならない?」
 自然な歓談が続いていたはずのテーブルが一気にしん、とした。
 やば、会話の流れとか空気とか読んでなかったかも……。
 でも、「あぁ、それいいよ」と蒼樹が会話に乗じた。