「ここは学校じゃないだろ?」
 なんて、もっともらしい理由をつけて。
「……慣れなくて変な気がするけど」
「タメにずっと敬語を使われてる俺の身にもなれ」
 どこら辺に笑いの要素があったのかわからないが、翠はクスクスと笑っていた。
 そして、
「先輩……私、先輩のことも傷つけちゃったよね」
「そうだな……。大嫌いとかムカつく程度のものだったけど」
 ショックはショックだったけど、貴重な体験だったかな、とは思う。
「ごめんなさい」と謝られ、これ幸いと思う自分が恨めしくもなる。
「……名前」
「え……?」
「敬語をやめるのと、プラスアルファ。名前に先輩つけないで」
「は……?」
「それで許してやるって言ってるんだけど」
「…………」