ふと翠を見ると、昼間とは違う表情をしていた。
 どこか落ち込んでいるような、そんな顔。
 零樹さんと会うことに緊張している、というような顔ではなかった。
「何かあった?」
 ベッド脇にあるスツールに座り、翠に訊く。
「どうして、ですか?」
「昼間に見た顔と違う」
 翠は顔を手で押さえて確認しているようだった。
「言いたくないなら別に言わなくていいけど」
 俺はポケットから文庫本を取り出す。
 中身は大学一、二年で習う医学英語の本。
 英文に目を通し始めたところで翠が口を開いた。