開いている病室のドアを軽くノックする。
「はい」
 相変わらずか細い声。
 中に入るとテーブルの上に薬を見つける。
 翠の薬はスタッフ管理のはずだけど……。
「薬……」
「お父さんと会ったあとにしようと思って……」
「そう」
 時計を見れば六時五十分。
 あと十分したら零樹さんが来るのだろう。
 そしたら俺はどうしたらいいものか。
 普通なら親子水入らずで話したいところだと思うが……。
 とりあえず、屋上まで移動する間はついていてやれるだろうか。