時計を見れば六時半を指したところだった。
 母さんに見送られて家を出る。
 再び自転車に跨り、今度はなだらかな坂を下り病院までの一本道を行く。
 この時期、六時を過ぎていようと暑いことに変わりはない。
 けれど、この生あたたかい風はそんなに嫌いではない気がした。
 九階に着き、藤原さんに挨拶するのは恒例行事。
 とくに何か話すわけでもない。
 この、必要以上にかまってこない辺りが楽。
 この距離感は姉さんと兄さんに見習ってもらいたいことの最上位。