「ただいま」
「先にシャワーでそのあとにご飯よね?」
「そう。夕飯食べたらちょっと病院へ行ってくる」
「あら、何かあったかしら?」
「姉さんの患者から頼まれごとしてる」
「湊の患者……? あの子、今は校医よね?」
「うちの生徒なんだ」
「もしかして、楓が麻酔科医になるきっかけになった女の子のこと? 確か、御園生――」
 首を傾げて名前を思い出そうとしているらしい。
「珍しくてきれいな名前の子」
 どうやら名前を思い出すのは諦めたらしい。