「はい、終了。今日はここまで」
「あのっ、答え合わせくらいっっっ――」
「静かにしてくれないか。ここ、図書館なんだけど」
 目の前に座るは柏木桜。
 家庭教師という名目で教えてはいるが、覚えは悪い、宿題はやってこない、集中力は皆無――揃いに揃って最悪だ。
「答え合わせをする必要はない。全部間違ってる。これ、正しい答えと途中式。家で復習してわからないところを次のときに訊いてくれればいいから」
「このあと、うちでお夕飯をっ――」
「……何度言えばわかる? 場をわきまえろ」
「ごめんなさいっ、だから一緒にお夕飯――」
「申し訳ないけど、このあと先約があるから」
 そう言って席を立った。