「とくに何もなかったの……。でも、声が聞きたくて……」
『…………ミソノウサン?』
「……どうして急にさん付けなの?」
 携帯から聞こえてくる声が、わざとらしいまでにカチコチとして聞こえた。
 きっと文字にしたら間違いなくカタカナ表記。
「そんなに変、かな……」
 それは、今までそういう関係になかったことを裏付けているのかもしれなくて、ツカサと自分がどんな関係だったのかに不安を抱いた。
 一緒にいると落ち着くのに、安心できるのに、声を聞きたいと思うのに――。
 そういうことが気軽にできる関係ではなかったのだろうか。
 でも、そういうことが気軽にできる関係ってどんな……?
 先輩後輩? 友達? 親友?
 ――私の片思い、とか……?