「見えるよ……。白鳥座とか」
『夏の大三角形は?』
「えぇと……こと座のベガ、わし座のアルタイル、白鳥座のデネブ……?」
『……正解。じゃ、本当に切るから』
「うん、おやすみなさい」
『おやすみ』
 電話を切ったあとも、しばらくは最後の声の余韻に浸っていた。
「やっぱり、ツカサと話すのは落ち着く……」
 時々ものすごく焦るのだけど、嫌というのとは違う。
 もう少し話していたかったな、と思う自分がいることもわかっている。
「……でも、何か話す題材を見つけてからじゃないと長電話できそうにないな」
 それが今回の電話から得た教訓で、最大の難関に思えた。