光のもとでⅠ

「でもね……本当はそれも違う。昇さん……我慢ってどこまですればいいんだっけ? いつからか、それがわからなくなっているの」
 泣き笑いで言うと、私の背の方にあるナースコールを押し、
「注射の準備お願いします」
 と、一言だけ口にした。
 すぐに、ステンレストレイを手にした藤原さんが入ってきた。
 昇さんはゴム手袋をはめ、小瓶から薬を注射器に移す。
「点滴のラインから入れるから痛みはない」
 説明をすると、すぐに処置が行われた。
 処置といっても昇さんが言ったとおり、点滴のラインに注入するだけ。
 痛みも何も伴わない。
 けれども効果は覿面で、ふわりと意識が飛びそうになる瞬間に聞いた言葉。
「すごく難しいことだよ。どこまで我慢をすればいいのか、っていうのは。でも、翠葉ちゃんはもう少し早めに口にしていい」
 もう少し早目……。
 そういうの、定規であと何センチとか、何グラムってもっとわかりやすかったらいいのにね――。