光のもとでⅠ

 海斗くんに髪の毛が汚れるから立ってって手を差し出されて……。
 でも、どうしてそんなことになったんだっけ……。
 何かを思い出そうとすると、毎回こんな感じだ。
 ところどころは覚えているのに、状況がうまくつながらなくて気持ちが悪い。
 その場にツカサがいたのかな。
 訊いたら教えてくれるかもしれない。
 そう思ったけど、明後日にインターハイを控えている人が来るわけない。
 電話、しようかな……。
 でも、あの人はなんだかずっと本を読んでいるか勉強していそうなイメージがある。
 それこそ、邪魔をしたらものすごく機嫌の悪い声が返ってきそうだ。
「さっきから百面相ね?」
 藤原さんがドライヤーを片付け始める。
「え? そうでしたか?」
「それはもう。見てるのが面白いくらい」
 考えていたことがそのまま顔に出ていたかと思うと少し恥かしい。