「そういえば、俺今の場所で透明人間扱いされたことがあるんだけど」
 ツカサがポツリと口にした。
「は……?」
 思わず後ろを向くと、エレベーターが九階に着いたことを告げ扉が開いた。
「悔しいから詳細は教えないけど」
「えぇっ!?」
 それはひどくないだろうかっ!?
「思い出そうと躍起になると、記憶を司る海馬が壊れるからやめたほうがいい」
 何それっ!?
「ツカサっ、さっきの撤回っ。ツカサは意地悪っ」
 思わず声が大きくなる。
 けれどもツカサは表情を変えずに、「ここ病院だから」とチクリと指摘したのみ。
 むっとしたまま前方に顔を戻すと、唖然とした顔が三つ並んでいた。
 それは紛れもなく、お母さんと蒼兄と唯兄だった。