光のもとでⅠ

「詳しい話はお母さんが聞いてるけど、検査に異常は見られなかったって。脳波もとくに問題はないだろうって」
「また……また異常なし、なの?」
 "異常なし"――。
 それは私にとってあまり嬉しい結果とは言いがたいものだった。
 普通なら異常がないほうが好ましいのだろう。
 けれども、この身体は検査に引っかからない異常があるのだ。
「翠葉、痛みの病気とは別物だよ。脳に問題があって……たとえばアルツハイマーとかそういうものなら検査でちゃんとわかる」
「じゃぁ、なんで自分が話した記憶がないのっ!?」
 唯兄がテーブルに置いていった携帯に目をやる。
 その携帯には見覚えがあるのに、どうしたことかストラップには記憶がない。