「お父さんとお母さん、蒼兄と唯兄」
「若槻のことは覚えているのね。じゃ、私の弟たちは?」
「先生の弟は、楓先生と……楓先生だけですよね?」
 一瞬頭の中でぐにゃりと音がした気がする。
「栞と昇は覚えてる? 海斗は?」
「……覚えてますけど」
「清良女史は?」
「……先生、私、毎日会ってる人くらいちゃんと覚えてます」
 ちょっとむっとして答えると、
「そう……ちょっと待ってて。検査のオーダー入れてくるから」
 そう言ってカーテンから出ていった。
 変な先生……。
 あんなに驚いた顔は初めて見た。