翌朝、基礎体温のアラームが鳴るまで、私は一度も目覚めなかったことに感謝したい。
 まだ少し眠いくらいで、頭は朦朧としているものの、昨夜のことを思い出すのには十分な環境にいた。
 見慣れない室内に放心していると、携帯が鳴った。
 着信音が秋斗さんでないことにほっとする。
 ディスプレイを見てさらに安堵した。
 ツカサからの電話だった。
「もしもし……」
『無事?』
「……あまり大丈夫じゃないかも」
『病室が十階に移ったことは藤原さんから聞いた』
「……そうなんだ。ごめん、まだ頭がぼーっとしてて……でも、ツカサの声を聞くと落ち着く……何か、何か話して?」