「私のPHSにもちょっとした仕掛けがしてある。エレベーターが十階に着いたりセキュリティの解除がされると誰が来たのか通知されるようになってるの。だからあまり不安に思わなくていいわ。何があったのかは知らないけど、今の秋斗くんが御園生さんの毒にしかならないってことはわかったから」
 私が言葉を口にしようとしたら、
「今日は寝ちゃいなさい。話は明日聞く」
 と、唇に人差し指を当てられた。
「少し強めの睡眠薬を出したの。きっとそんなにかからず眠れるわ」
 点滴の滴下を調整している藤原さんの手元を見ていたら、知らないうちに私は意識を手放していた。
 ポツリポツリ、と落ちる点滴の水滴は、まるで人の涙みたいに見えた――。