『何?』
「十分後に私に電話してくれないかな」
『何を考えてる?』
「十分間で自分の勇気総動員かける。で、秋斗さんに電話して明日時間がもらえるようにお願いしてみる。でも、勇気が足りなかったらきっとかけられないから、そしたらツカサからの電話で叱ってもらおうかと思って……」
『…………』
 この無言はなんだろう。
「ツカサ……? だめ、かな?」
『どうしたらそんな突飛な考えが浮かぶんだか……』
「え? 変、かな……?」
『変だと思う。でも、翠らしくはあるかな……。わかった。じゃ、切るから』
 そう言うと、私が何を返事する前に通話が切られた。
 携帯の時計を見れば八時十分前。
 そこからの十分間はひどく長いような短いような、なんともいえない時間だった。