「明日で治療が打ち切られるから、だから……余裕のある今のうちに大切な人に会ってるのだけど……」
『秋兄のこと?』
「……うん。ちゃんと会って謝らなくちゃいけないんだけど、でも、電話する勇気が出なくて……」
『……そんな勇気のいること?』
 ツカサは知らないのかな。
 私が自分で髪を切ったこと。
「あのね……私、入院した日、ツカサが来る前に秋斗さんにすごくひどいことしたの。……髪の毛――髪の毛を自分で切って、秋斗さんに押し付けた……」
『……聞いてる』
「……そっか」
 今も私は携帯を右手で持ちつつ、左手は左サイドの短くなった髪の毛を触っている。
『翠は謝罪しないと先には進めないんだろ? なら、がんばるしかないんじゃないの』
「うん……。あのね、ツカサにお願いがあるの」