蒼兄たちが帰るとき、お見送り、という大義名分を引っ提げてナースセンターの前を通った。
 私は携帯を片手に、点滴スタンドを押して歩いてた。
 携帯が使えるコーナーはちょっとしたスペースになっていて、ソファも置いてあるから。
「じゃ、あとで電話するね。運転気をつけてね」
「メールでも電話でもどっちでもいいよ」
「うん」
「じゃ、おやすみ」
 手を振りながら、エレベーターのドアが閉まるのを見届けた。
 今度は長い廊下の突き当りを目指す。
 私以外は誰もいないという階なのに、照明は煌々とついている。
 私の病室はナースセンターの斜め前だし、こんなにたくさんの灯りがついていなくてもいいと思う。
 でも、病院が薄暗い非常灯の灯りだけだったら、やっぱりもっと嫌な印象を持っていたかもしれない。
 そう思うと、灯りがとても貴重なものに思えた。