「本当はさ、姉さんたちと病室で会わせるのが嫌で、中庭とかで会えたらどうだろう? って俺が勝手に思ってたんだ」
 え……?
「病室ってさ、翠葉ちゃんの中では嫌なことを考えるスペースになっちゃってたでしょ?」
 言われて一年前のことを思い出す。
「だから、病室の外で会わせてあげたくて、早々に病室から連れ出そうと思ってたんだけど……。裏目に出ちゃったね。ごめん、逆につらい思いさせて」
 謝られて私は慌てる。
 でも、慌てたところでなんて言葉を口にしたらいいのかはわからなかった。
「翠葉ちゃん、聞いて? 俺は今これを食べるけど、あとでちゃんとご飯を食べるから。約束する。だから、一緒に食べようよ」
 私が安心できる優しい笑顔だった。
 秋斗さんと似てる、とてもとても優しい笑顔だった――。