「嫌、です」
 ポロリ、と口から零れる。
「……そうだよな。やっと楽になったんだもんな」
 昇さんはスツールに掛けて俯いた。
 その様子に、本当に治療が打ち切られることを悟る。
 昇さんは嘘はつかないし冗談も言わない。
 いつも"本当"だけを口にする。
「先生……二日だけ待ってもらえませんか」
「ん?」
「私、今の状態ならお母さんたちに会えるかもしれない。でも、痛みが出てきたらちょっと無理……。会うならその前に会っておきたい」
「……痛みがあってもなくても翠葉ちゃんだろ?」
「そうだけど……。でも、余裕がなくなる前に会いたいって思うのはいけないことですか?」
「……そんなことはない。でも、なんで二日なんだ?」
 不思議そうな顔をすると、怖そうな人という印象がなくなる。