十を数え終わると、ブン、と音がした。
 顔を上げると、十メートルほど先にある自動ドアが開いたところだった。
 そこには淡いパープルのシャツを着たお父さんがいて、外に出るとこちらに向かって真っ直ぐ歩いてくる。
 久しぶりに見るお父さんは、少し日焼けしているように見えた。
「翠葉」
 名前を呼ばれ、「お父さん」と私も口にする。
「具合はどう?」
「ん……大丈夫」
「そう」
 お父さんは私の隣まで来ると、花壇に腰を下ろした。
「お母さん、元気……?」
「ん~……何か聞いた?」
 聞いたと言えばいいのに、どうしてか言えなくて。
 黙りこんでしまう自分が嫌……。