「御園生さん、大丈夫ですか?」
 涼先生に優しく声をかけられた。
「大丈夫、です」
「昇はストレートな物言いをするし、少し無骨なところもありますが、御園生さんが嫌いであんな言い方をしているわけじゃありませんよ」
「はい……」
「ひどい吐き気は治まりましたか?」
「はい」
「では、そろそろ夕飯の時間ですから、楓に病室まで送ってもらいなさい」
「はい……」
 ずっと俯いていた私の手を涼先生が取った。
「御園生さん、ゆっくりと時間をかけて考えませんか? 誰かに言われて大切なことに気づくこともあります。でも、気づいたからといって、すぐにどうこうできることばかりではありません。少しずつ、自分の行く道を探してみてはどうでしょう」
 手を離されると、肩に優しく触れてから涼先生は席を立った。