今日、久しぶりに自分の顔をしっかりと見た気がする。
 昨日だってお風呂に入るときには鏡を見たし、今朝だって歯磨きのときに見ていたはずなんだけど、自分の顔に関しては記憶が曖昧だった。
 でも、今は意識もはっきりとしていて、自分を観察する余裕もある。
 それは、お父さんと会うのに司先輩が立ち会ってくれるという保険を得られたからだろう。
 そうじゃなかったら、今も何を話したらいいのか、とずっと考えていて、自分の顔をまじまじと見る余裕なんてなかったはずだから。
 自分の左サイドの髪の毛に手を伸ばす。
「そこだけ短いのね?」
 藤原さんが首を傾げる。
 不思議に思われても仕方ない。
 左サイドだけ、一房分、ザックリと無造作に切られた髪が鎖骨のあたりにあるのだから。
 あの日、私が自分で切った髪の毛――。
 秋斗さんの目の前で切り、それを押し付けた。