「……録音してある声を聞いてたの」
「……ふーん。ま、そのくらいはいいんじゃない?」
 誰の声が録音してあったのかとか、何を聞いていたのかとか、そこまで訊かれなかったことにほっとした。
「で、なんで俺がいたら泣くわけ?」
 不服そうな顔で尋ねられる。
「あのね、明日、お父さんが現場に戻るの。その前にお父さんにだけは会うことになって……でも、少し怖くて……。何を話したらいいのかわからないの」
「で、なんで俺を見て泣くかな……」
 先輩はこめかみのあたりを押さえてため息をついた。
「世間話って何があるのか訊きたかったんです。そしたら、目の前に先輩がいたからびっくりして……」
 先輩はため息をつきながらスツールに腰掛けた。