「落ち着け……それ以上行くとベッドから落ちる」
 はっとして自分がいる場所を確認する。と、気づけばシングルベッドの端っこまで来ていた。
 そうだ……私、今、病院のベッドの上にいたんだ。
 恐る恐る振り返ると、そこには主治医である神崎先生が苦い笑みを貼り付けていた。
「ずいぶんと心外な朝の挨拶をどーも」
 そこへ藤原さんがやってきた。
「御園生さん、どうかした? 絶叫してたみだいけど」
 相変わらず落ち着いた様子で尋ねられる。
「あ、あの、あの……気づいたらこの人がいて――」
 思わず人差し指で先生を指してしまう。
「神崎医師……少しは現れ方と言葉遣いに気をつけてください。それから、診察に来たならまずはナースステーションに立ち寄ってカルテに目を通す」
「カルテなら救急のパソコンからデータ見てきたし、現れ方云々は、あれですよ。患者とのコミュニケーション」
 再度こちらを振り返った先生に朝の挨拶をされた。