洗面を済ませたあともインストを聞きながら横になっていた。
 目を瞑って音だけに集中。
 これはシンセで音を出してるんだろうな……。
 楽器の種類や曲の構成を考えながら聞いていると周りは一切見えなくなる。
 そのときだけは病室にいることを直視せずにいられる。
 そんな中、
「うっす。体調はどうだ? 飯は食えたか?」
 やけに低い声が耳もとで聞こえてフリーズ。
 目を開けると、左側に男の人の顔があった。
「きやあっっっ」
 その場から一刻も早く立ち退きたくて、今いる自分の場所から右へ右へと移動すると、後ろからがっしりと着衣を掴まれた。