光のもとでⅠ

 藤原さんの言葉で、久しぶりにバングルの存在を思い出す。
 昨日、お風呂に入ったというのに、まったく目にした覚えがなかった。
 藤原さんにも訊かれなかったし、神崎先生にも何も言われなかったから。
 それだけ身体に馴染んだという証拠なのだろうか。
 バングルは、つけたときよりも少し上の位置についている。
 痩せてしまったため、肩に近い方へと少しずらしたのだ。
「冷めないうちに食べちゃいなさい」
 藤原さんがスツールに腰掛けたところを見ると、今朝の食事にも付き合ってくれるようだ。
 重湯を口にすると、昨日よりは少しドロっとした感じのものだった。
「重湯と十分粥の間くらいかしらね?」
 藤原さんが首を傾げる。
「藤原さん、ほかの患者さんは……?」
「いないわよ? この階、今は御園生さんしかいないの」