鋭く思えた目が一気に細まる――笑顔、だろうか……。
「翠、大丈夫だから」
 水差しを置いた手はまた私の左手を握ってくれていた。
 自分でも気づかないうちに、手に力をこめていたみたい。
「司、ちょっと後ろ向いてろ」
 栞さんの旦那さんに言われ、司先輩は壁の方を向いた。
 栞さんの旦那さんがずい、と近寄ってきて体が反射的に逃げる。
「翠葉ちゃん、点滴の針に問題がないかチェックさせてもらう」
 言って、躊躇なく左鎖骨に手を伸ばした。
 顔を背けるだけでも引っ張られる感じがする。
 皮膚なのか、筋肉なのか――と考えていると、
「こうしたら少し楽じゃない?」
 バリトンの声で尋ねられる。