「……お水、欲しいです」
 先輩はベッド脇にかけてあったリモコンの操作をし、少し体を起こしてくれた。
 違和感のある首元に右手を伸ばすと、手に点滴の管が触れた。
 通常よりも太いもの――高カロリー輸液だ。
 さらに視線をずらすと、点滴スタンドには見慣れたパックと一年前に見たことのあるパックが並んでぶら下がっていた。
 下半身にも違和感があるけれど、尿カテーテルの感じではないところからすると、オムツだろうか。
 先輩が口もとに持ってきてくれた水差しで口の中を潤す。
 次の一口を飲み込むと、喉のあたりに違和感があった。
 高カロリー輸液をしているとき、どうしても皮膚が引っ張られるような感じがある。
 それを感じながら、あぁ、とうとう病院に入っちゃったんだな、なんて思った。
「翠、目を覚ましたら紫さんを呼ぶことになってる」
「……はい」