「嘘だよ、嘘……。翠が落ち着いたらちゃんと連絡入れる。そしたら会いにいってやって。その頃には翠は自分を責めてどうしようもないことになっているだろうから……。それを解消できるのは秋兄だけだろ?」
 面白くはないけど、翠の負担を少しずつ減らしてやりたい。
 どんな些細なことでもひとつずつ――。
 俺はそうやって翠に歩み寄る。
 翠から頼ってもらえるようになるその日まで。
 翠にはペースを乱されて困惑することもイラつくこともある。でも、それだけじゃないから……。
 いつか、こんな話をできる日がくるだろうか。
 ……どっちに転ぶも俺しだい、か。
 俺は翠のことを知りたいと思うと同時に、俺のことも知ってもらいたいんだ。
 翠のことが気になるということには割と早く気づけたと思う。
 でも、自分のことを知ってもらいたいという気持ちに気づいたのはいつだったか。
 思い出そうとしても、その辺の記憶は定かじゃない。
 でも、大切なのはいつからそう思っているかではなく、今、俺がそう思っている事実だと思う――。