なんだよ、その顔……。
「司、好機なわけだろ? いいのか、そんなこと言って」
 あぁ、そういうこと……。
「出し抜いたり裏をかいたり、そういうのは嫌いじゃない。けど、この件で秋兄に対してフェアじゃないのはなんかやだ」
「返す言葉がないよ。……俺、確信犯で翠葉ちゃんの気持ちがおまえにあるってわかった時点で掻っ攫ったからね」
「……それっていつの話?」
「司がホテルで会食してたのを見たときだから、ゴールデンウィーク明けくらいかな」
「……ふーん。じゃ、連絡するのなしにしようかな」
 秋兄はまじまじと俺を見た。
「あのさ、前見て運転してくれない? 私道とはいえ、俺まだ事故で死にたくないし、下半身不随とかも勘弁」
「……悪い」
 素直に謝るなよ……。