光のもとでⅠ

 こんなに短期間であんなに人が変わるのを初めて見たかもしれない。
 作り物の人形――ぬくもりある人間には見えない笑み。
 少し前までの翠葉がどこにいるのかわからない。
 表情がころころと変わる翠葉が今は穏やかに笑みを浮かべるのみ。
 解離性障害が出ているのかとも疑っていたが、楓がそれはないだろう、と言う。
 どんなにつらくても、痛みがひどいときに自分を手放すような子じゃない、と言いきった。
 去年までの治療経過からか、紫さんも同意見らしい。
 確かに、以前見たことのある機械的なまでのシャットアウトとは違った。

 今日がタイムリミット――。
 だから秋斗にも司にも連絡を入れた。
 秋斗はすぐに捕まり、今頃は御園生家に行ってくれているだろう。
 一方、司には連絡つかず――。
 携帯を手にしていないということは部活中なのだろうけれど……。
「ま、あれだけひつこく電話してれば嫌でも折り返しかけてくるわね」
 車に乗り込み、窓全開で冷房を入れる。